オーバーキル

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'''オーバーキル'''(''Over Kill'')とは、軍事用語で「戦力の過剰投入」「過剰殺傷」の意。俗っぽく言えば「やりすぎ」ということ。
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'''オーバーキル'''(''Over Kill'')とは、[[デッキ]]の構成や[[カード]]を評価する際に出てくる概念の1つ。直訳するなら「殺しすぎ」、もっと分かりやすく言うと「やりすぎ」。直接相手を[[敗北]]させる場合以外にも用いられることがある。
  
10人の兵士で十分な任務に100人の兵士を派遣するのは、90人ぶんの戦力や物資の無駄である。これを「戦力の過剰投入」と言い、軍学や兵法ではできるだけ避けるべきこととされる。この考え方はビジネスやゲームに広く援用されている。[[マジック]]においては、以下のような考え方に分類できる(中でももっともよく使われる用法は1だろう)。
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例えば、[[対戦相手]]の[[ライフ]]は通常20点であるので[[猛火/Blaze]]の[[X]]を100や100万にする必要性は薄い。そのような膨大な量の[[マナ]]を出すことを目指すより、速やかにX=20の猛火を撃てるマナを出すことを目標にした方が良い。
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無駄なほどの高威力は、その威力が増すほどに多くの[[リソース]]が費やされることを考えると非常に効率が悪く、そのリソースを別のものに向けた方がより確実に早く[[勝利]]できるはずである。つまり、オーバーキルになってしまうデッキ構成は避けるべきであるし、単体でオーバーキルなカードはコンセプトを重視した[[ファンデッキ]]でなければデッキに入れないほうがよい。また勝率を考えたとき、優勢な状態からさらに有利な状況へ持っていくカードを入れるよりは、劣勢な状況をひっくり返せるカードや、五分に近い状況から優勢に持って行くためのカードを入れたほうがよい。
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[[マジック]]においては、具体的には以下のような考え方に分類できる(中でももっともよく使われる用法は1だろう)。
  
 
#[[カード]]の性能評価において
 
#[[カード]]の性能評価において
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*上記のプレイングの例で言えば、[[巨大化/Giant Growth]]でタフネス4まで[[強化]]されても除去できるように、ロスを承知で電撃破で4点与えることが結果的に正解となる場合もあるだろう。
 
*上記のプレイングの例で言えば、[[巨大化/Giant Growth]]でタフネス4まで[[強化]]されても除去できるように、ロスを承知で電撃破で4点与えることが結果的に正解となる場合もあるだろう。
 
**特に有名な例として、[[プロツアーシカゴ99]]の決勝戦が挙げられる。[[生命吸収/Drain Life]]のXを残り[[ライフ]]ぴったりの数値で唱えたために、[[剣を鍬に/Swords to Plowshares]]のライフ回復で凌がれて逆転負けを喫してしまった。
 
**特に有名な例として、[[プロツアーシカゴ99]]の決勝戦が挙げられる。[[生命吸収/Drain Life]]のXを残り[[ライフ]]ぴったりの数値で唱えたために、[[剣を鍬に/Swords to Plowshares]]のライフ回復で凌がれて逆転負けを喫してしまった。
*混同しがちであるが、問題点は「効果が必要以上に高い」ことではなくて、そのせいで「実用性を損なっている」ことである。[[コスト]]や使用条件が実用の範疇であれば、効果自体は強いに越したことはない。
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*混同しがちであるが、問題点は「効果が必要以上に高い」ことではなくて、そのせいで「実用性を損なっている」ことである。[[コスト]]や使用条件が実用の範疇であれば、効果自体は強いに越したことはない。[[稲妻/Lightning Bolt]]と[[ショック/Shock]]が両方使用可能な[[環境]]であれば、前者より後者を優先して採用する理由はない。
 
**そういったカードのことは[[パワーカード]]などと評する。例としては、[[歯と爪/Tooth and Nail]]や[[引き裂かれし永劫、エムラクール/Emrakul, the Aeons Torn]]などが挙げられるだろうか。
 
**そういったカードのことは[[パワーカード]]などと評する。例としては、[[歯と爪/Tooth and Nail]]や[[引き裂かれし永劫、エムラクール/Emrakul, the Aeons Torn]]などが挙げられるだろうか。
**加えて、その「実用性」という評価もまた相対的であることに注意。[[リミテッド]]と[[構築]]、また[[スタンダード]]と[[エターナル]]など、[[環境]]ごとにそれぞれ評価が変わってくるし、また新カードの登場・研究によって変化することもある。
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**その「実用性」という評価もまた相対的であることに注意。[[リミテッド]]と[[構築]]、また[[スタンダード]]と[[エターナル]]など、[[環境]]ごとにそれぞれ評価が変わってくるし、また新カードの登場・研究によって変化することもある。
  
 
==参考==
 
==参考==
 
*[[用語集]]
 
*[[用語集]]

2021年9月1日 (水) 16:13時点における版

オーバーキル(Over Kill)とは、デッキの構成やカードを評価する際に出てくる概念の1つ。直訳するなら「殺しすぎ」、もっと分かりやすく言うと「やりすぎ」。直接相手を敗北させる場合以外にも用いられることがある。

例えば、対戦相手ライフは通常20点であるので猛火/BlazeXを100や100万にする必要性は薄い。そのような膨大な量のマナを出すことを目指すより、速やかにX=20の猛火を撃てるマナを出すことを目標にした方が良い。

無駄なほどの高威力は、その威力が増すほどに多くのリソースが費やされることを考えると非常に効率が悪く、そのリソースを別のものに向けた方がより確実に早く勝利できるはずである。つまり、オーバーキルになってしまうデッキ構成は避けるべきであるし、単体でオーバーキルなカードはコンセプトを重視したファンデッキでなければデッキに入れないほうがよい。また勝率を考えたとき、優勢な状態からさらに有利な状況へ持っていくカードを入れるよりは、劣勢な状況をひっくり返せるカードや、五分に近い状況から優勢に持って行くためのカードを入れたほうがよい。

マジックにおいては、具体的には以下のような考え方に分類できる(中でももっともよく使われる用法は1だろう)。

  1. カードの性能評価において
    • 例えば焼尽の風/Searing Windは、10点もの威力の火力は確かに強力ではあるが、そのぶんマナ・コストが非常に重いため、強力さよりも扱いづらさのほうが目立ってしまっている。
    • 例えばオドリックの十字軍/Crusader of Odricは、自軍が大量にいる(つまり自軍が有利な状況である)ことが前提のデザインである。このような「有利をより有利にする」カードは、「逆転される前に一気に勝負をつけられる」「五分五分の均衡状態を打破できる」という側面もあるものの、逆に「実はいなくても勝てる」カードであることも多々ある。
  2. プレイングにおいて
  3. デッキ構築において
    • 例えば、粉砕/Shatterのような用途が狭い呪文を大量にデッキに入れるのは明らかに「やりすぎ」であり、デッキ自体の機能性をゆがめることになる。
    • 例えば、コントロール・デッキにおけるフィニッシャーと呼ばれるカードは、主に「終盤の最後のひと押し」として使用するものであって、大量に必要なものではない。ゆえに、フィニッシャー級のクリーチャーを大量にデッキに投入するのは「やりすぎ」で、むしろそれではデッキがまともに機能しなくなる。フィニッシャーは少数に抑えて、除去打ち消しドローと言ったサポートカードを多めに採用するのが基本となる。

ただしいずれの場合にも、メタゲームデッキ構成、また個々の状況も考慮する必要があるので、絶対の基準は存在しない相対的な概念であることに注意が必要である。

参考

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